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月と常夜灯

常夜灯系作家・結来月ひろはの公式サイト

初めて刀剣乱舞ミュージカル『静かの海のパライソ』を見た話と感想

「おすすめの2.5次元ミュージカルを教えて下さい」

少し前にそんなツイートをした際に教えてもらったひとつが刀剣乱舞ミュージカルでした。
私の『刀剣乱舞』はゲームをしていたのとアニメ(活劇・花丸)を見ていてキャラは知っているくらいで、ミュージカルについては「TLでよく見る、とにかくすごい舞台らしい」でした。

「せっかくおすすめてもらったし見たい」と思っていたところにライブビューイングのお誘いをいただき『静かの海のパライソ』の大千秋楽のライブビューイングに参加しました!

この記事は初めて刀剣乱舞ミュージカルを見た、いちオタクの感想レポになります。

・メモは取っていないため、台詞などはニュアンス的なものになります。
・記憶がとんでいる部分・ストーリーが前後している部分は脳内補完して下さい。
・ぼかせるところはぼかしていますが、ネタバレが苦手な方はご注意下さい。
・こちらはあくまでも個人的な感想・考えになります。
・刀剣男士はキャラ名(の一部)で呼んでいます。




圧倒的な「美」
舞台が始まり、私が刀剣乱舞のミュージカルで初めて目にした刀剣男士は鶴丸でした。
黒の中で踊る白。
あんなにも強烈な「美」を感じたのは初めてで、一気に刀剣乱舞の世界へと引き込まれました。指先の動きやひるがえる裾、こまかなところに至るまで、とにかく美しく息をのみました。
(手ぶりのところに少し手話が入っていたような気がしたのですが、手話を習ったのが十年以上前なのでちがっていたらすみません)


鶴丸に感じた「美」と「恐怖」
ストーリーの舞台、そしてタイトルにもあるパライソから島原の乱が題材となったものなのかなとは思っていました。ただ冒頭で天草四郎があんなことになるとは思っておらず、これからどうなってしまうのかと思う中で出された鶴丸の提案と明るさに恐ろしさを感じました。
「島原の乱」の結末を知っているから、そして数年前に長崎の博物館で島原の乱に関する展示を見ていたから、余計にこの提案と明るさが恐ろしく、しんどく感じました。
「つくも神(人間ではない)だからこそ人間と感覚がちがうから、そうしたことが言えるのか」
冒頭で見た人間離れした美しい舞のこともあって、この時はそう思っていました。


浦島と日向
ふたりの可愛いやりとりに、とても和みました。
同時にふたりには見せたくないと言っていた理由もすごくわかります。
ふたりとも真っすぐなんですよね、すごく。島原の乱について知らなかったのもあるものの、鶴丸の提案も受け入れて頑張って仲間を集めて……。
蓑踊りの話をする浦島に鶴丸が「それは本当に見たのか?」というようなことを聞く場面があったのですが、浦島はあくまでも話を聞いただけで。このやりとりが後に鶴丸が右衛門作に話す「真実は捻じ曲げられる」につながっていたように思います。
これは歴史だけの話ではなく、現代のネットや噂話にも通じることでもありますね。
ふたりの真っすぐさは島原の乱の結末を知っている者にとって時にあやうさを感じると共に辛いものであったと思いますが、同時に救いにもなっていたのではないか。救われたのは兄弟や一揆の人達もですが、鶴丸達もどこかで救われたのではないかとそう思います。


豊前と松井、そして鶴丸
最初に豊前と会った時の松井のやりとりが、こう繋がってくるとは思っていませんでした。
刀自体には詳しくなかったので、松井が島原の乱に関係していた刀というのは見ている中で初めて知りました。松井の葛藤、そしてそんな松井に寄り添う豊前がすごくよかったです。
松井の葛藤は人の形をとったからこそ生まれた葛藤でもあるんじゃないか。そしてその葛藤は他の誰でもない自分自身が向き合うしか解決することはできないと豊前は知っているからこそ、鶴丸に対して、あのような言葉が出てきたのではないかと思いました。
刀だった時の持ち主の言葉を受け取った松井の表情がとてもよかったです。


兄と弟

本当に切なかったです。浦島と仲良くなればなるほど、見ていてすごくつらかったです。
母親が亡くなった理由。兄として最後まで弟を守ろうとした兄と、兄と一緒に一生懸命戦った弟。それは「兄弟愛」という一言ではあわらわせない、もっと生々しいもので、戦わなければ生きていけない・これからも生きていかないといけないという兄の言葉がつらかったです。
そして天草四郎となったことで、その他大勢の中に存在が埋もれることはなかった兄とひとりで生きていくことになった弟。あの後、弟は「母と兄はどこかで生きている」という希望を胸に生きていくのでしょうか。幸せに生きてほしいと願わずにはいられません。
城内での赤い紙吹雪のシーンは『ヘリオガバルスの薔薇』の絵画が浮かびました。


戦いを知らないふたり
父や祖父から関ヶ原や夏の陣の話を聞いたものの、実際に人を斬ったことはないと言っていた、どこかコミカルで憎めないふたり。
この時代ではこんなふたりのような人が大半で、戦いさえなければこのふたりは刀を振るうことも、戦に向かうことも、人を斬ることもないまま生きていられた。
このふたりも生きているかぎり考え続けることになり、最初のような調子で関ヶ原や夏の陣の話をすることはできないのでしょう。
なぜなら「戦い」がどういうものなのかを自分の目で、自分の手で知ってしまったから。
遠い昔話ではなくなってしまったから……。
このふたりの存在に、この時代の、そして刀を振るうことのリアルさを感じました。このふたりもある意味「戦いに平和な生活を奪われた人」なのかもしれません。


信綱と右衛門作
信綱の元を訪れて「なぜ皆殺しにすると決めたのか」とたずねた鶴丸。
信綱の答えはある意味、人と命と向き合ったものと言えるものでした。
自分がこれからしようとしていることがどれだけひどいことなのか、そして自分は一生それを背負い続けていく責任が、そして考える必要があると。そうしたすべてを覚悟の上での決断だったのでしょう。だからこそ、この戦いをただの「手柄」にさせないために勝手に攻撃を始めたら、自分達も続いて攻撃をすると決めたのかと思いました。
対する右衛門作は天草四郎、日向、鶴丸と人の後ろに隠れているようなことが多かったように思います。「降伏しよう」と言った右衛門作は一見仲間思いのようですが、鶴丸に言われるまで「戦い」が一体どういうものなのか、自分がやろうとしていたことや皆を率いて戦う責任や覚悟というものをわかっていなかったようにも思えます。
唯一生き残ってしまった右衛門作に対して「考え続けていかなければならない」という信綱の言葉。その言葉を右衛門作なりに受けとめたからこそ、天草四郎を連れてきたと言われたあの時に否定することをしなかったのではないかと思いました。
あの時、天草四郎を見て泣き崩れた右衛門作はようやく戦いというものや鶴丸が言っていた「真実は捻じ曲げられる」という言葉の意味を理解し、初めて誰かの後ろに隠れずにいたように思えました。


鶴丸と大倶利伽羅
言葉が少ないながらも鶴丸に寄り添っていた大倶利伽羅。
鶴丸がなにをするつもりなのか、すべてをわかった上で寄り添うことはこれからおこなわれることや結末がつらいものであればあるほど厳しくしんどいものだと思います。
けれど大倶利伽羅は最後まで鶴丸に寄り添いました。そして鶴丸も最後までなにも言わずに、自分がなすべきことを成し遂げました。
鶴丸は人間離れしていたわけでもなんでもない、ただ色々な気持ちを押し殺して歴史を守ろうとしていただけだとストーリーが進む中で気づかされ、最後の鶴丸のあの叫びを聞いた時「なんて人間らしいのだろう」と思うと共にやるせなさや悲しみが痛いくらいに伝わってきました。
同時に一番兄弟達を助けたかったのは鶴丸だったのかもしれないとも思いました。どんな気持ちで兄にロザリオをかけたのか……語られることはありませんでしたが、ロザリオをかけた時のゆっくりとしたどこか優しい手つきから、なにも想わなかったことは決してないと思います。
他のミュージカル作品を見ると、この時の鶴丸の気持ちがよりわかると教えていただいたので、他のミュージカル作品もぜひ見たいと思います。


どちらが「悪」か、ではない
一揆と幕府側、どの「どちらが悪か」ではなく「たとえどんな理由があったとしても戦いをしてはいけない」と一貫して描かれていたこと。そして戦いに関わったすべての人達に決して消えることのない痛みや悲しみをもたらすこと。それらが丁寧に描かれていたことがよかったです。
一部が終わって休憩になった時、気づくと涙があふれてきました。
この作品が私にとって初めて見る刀剣乱舞ミュージカルになってよかったとそう思います。



情報をほとんど知らないままでライビュに参加したので、二部にライブがあることを知らず(ライブはまた別のものだと思っていました。単騎出陣などと混ざっていたようです)フォロワーさんに二部はライブがあるよと教えてもらい、慌ててペンラを鞄につっこんだのですが、ペンラを持っていって本当によかったです。

刀剣乱舞以外は初めて聞く曲ばかりでしたが、とにかく皆かっこよかったです!
衣装のデザインも素晴らしくて最初のヒラヒラした可愛いスカートからのかっこいいステージ衣装(でいいんでしょうか?)へのチェンジ、そこからのそれぞれのパフォーマンス!!

マスクの下ではずっと口がポカンとあいたまま、どうにかペンラをふってました。
一部からも思っていましたが、かっこいい・可愛い・スタイルいい・腰細い・足長い・肌綺麗・美しいと、新しい扉をバンバンと連続で開かれ、勢いよく開いた扉に頭をぶつけっぱなしの状態でした。
いや、もう皆とにかくかっこよかったです。男性に対してあんなにも美しいと思うことがあるとは思いませんでしたし、初めての経験でした。

ライブなので刀剣男士以外は出ないのかなと思っていたんですが、キャストさん達の歌唱や太鼓のパフォーマンスもあったのがすごくよかったです!!
キャストさん達と刀剣男士のパフォーマンスではキャストさん達がニコニコされていて、あと誰だったかは忘れてしまったのですが刀剣男士のパフォーマンス中に刀剣男士にニコッとされるダンサーさんが映って。その表情がまたすごくよかったんです!
ダンサーさんもキャストさん達もすごくかっこよかったですし、皆さんの雰囲気の良さや仲の良さが伝わってきて良かったです。

最後の挨拶は演じられたご本人として挨拶をされるのかと思っていたのですが(今まで見たことある舞台では役名・名前を言ってご本人の挨拶の流れだったので)最後まで刀剣男士として挨拶をして下さったことに驚きました。
そして挨拶の中でこの日を迎えるまでに本当に大変だったこと、それでも諦めずに前を向き続けて下さった皆さんのおかげでこの日を迎えられたのだということを知りました。

諦めることなく前を向き続けて下さって、そして『静かの海のパライソ』という素晴らしい作品をそしてライブをつくって下さって、本当にありがとうございます。

初めて見た刀剣乱舞ミュージカルというのもありますが、それを抜きにしても私にとって決して忘れることのできない作品のひとつになりました。他の作品もぜひ見たいと思います。

出演者の皆様・関係者の皆様、素晴らしい作品を本当にありがとうございました。

最後になりましたが、刀剣乱舞ミュージカルをおすすめして下さって本当にありがとうございます。推しと沼が増えました。
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